小草若、小浜に現る


ここで筆が止まったのは、私がこの場面を好きすぎるからではないかな。

こなれたリポーター振り。
髪は少し茶色い、衣装のトップスは『まいご』と同じ。
売れっ子に相応しい器用さをテレビカメラの前では見せるのに、喜代美と、そして友春の前では壊れてしまう。


小草若が友春とつかみ合いの喧嘩になるきっかけの、友春の台詞。
「おまえに才能ないだけと違うか」

草若師匠も草々も決して口に出さない、小草若にとっての地雷。


そして、底抜け「寿限無」の虚勢に、彼の底知れぬ苦しみを感じるのです。

ここから先の彼を知ってしまっているから。


喜代美と小草若の違いについて考えています。
二人とも落語においては不器用だけど、喜代美はその他全般に不器用で、そのコンプレックスを前向きに努力して克服するようになる。
対する小草若は、一番認められたい落語だけが不器用で、その他は器用にこなせてしまうジレンマがあったかもしれないな。