照明係


三味線の皮が破れたので学園祭の舞台に出られない(ということになっているらしい)喜代美に、級友たちと清海は照明係を頼んだ。

喜代美は迷うが、清海の無理せんでもええよという言葉で、引き受けてしまった。


喜代美は清海の気遣いを苛だだしく感じたのだろうね。

羨んでいる相手から同情されたと思い、主役になりたい悔しさをごまかして、脇役になることを受け入れる。


家では応援に盛り上がっている糸子とケンカになる。

出ないことについて、その態度に図星をさされ、人のことはほっといてと子供の決まり文句が出る。


はい、その通り。

人のことを考えないのが子供という生き物だもの。

喜代美の様子を見て、私は自分が誰かの娘という立場しかなかった頃を思い出します。

糸子の、心配するのは親の仕事や、という言葉の方も、誰かの親という立場では自然に口からこぼれます。

喜代美の隠された自尊心、自己愛の強さ、糸子の押し付けがましいくらいの他者への愛情。

どちらもうっとうしくていとおしい。

ありふれた親子喧嘩で、その時点では辛いけど、きっと必要な経験。



学園祭当日、清海たちの前に出たグループが、槇原敬之の「どんなときも。」を歌っていた。


ドラマの流れにシンクロするものを、十数秒の場面でも選曲し聞かせる作り手のこだわりに、頭が下がりました。