第1週 笑う門には福井来る 第6回

かわらけなげ、の回なのですが、今の私が惹かれるのは正典さんのある日の記憶を呼び覚ました流れ。


喜代美の握り締めるカセットテープを見た正典さん。
表面に書き込まれた日付に気付く。
それは自分が父に、塗箸職人になりたいと伝えた日付だった。

「親父は喜んで……」と語られるあたりから、私は目を伏せて泣く。
何か記念になることをしたいと、落語会に行って、
「二人で思いっきり笑うた」


一緒に笑えることって、何て幸せなんだろう。
同じことに気持ちを動かされ、無心に笑う。
このテープを聞けば、おじいちゃん(正太郎さん)はあの喜ばしい日を思い、笑うことができた。


実家に戻った正典さんにもその音声は聞こえていたはずなのに、笑えていなかった。
父と気持ちが通わない焦りのためか、嬉しい記憶に繋がる回路が断線していたのかもしれない。
最期に父の思いを聞くことができて、喜代美の祖父への強い思慕にふれ、そしてテープに記された日付(と場所)で、ようやく回路が繋がって灯りがともった。


正典さんの中で塗り重ねられていたものがひとつ、ここできれいな模様になって出てきたんだ。
と感心するのと同時に、そうして素直に喜び合った記憶があってうらやましいと、某三番弟子になりかわってつぶやいておきます。