小梅おばあちゃんの発破
話は戻って三味線の稽古。
自分の出来なさ加減を悲観して、稽古に身が入らない喜代美は、楽器の扱いもぞんざいになり、とうとう皮を破ってしまった。
謝りに来た喜代美に小梅おばあちゃんは諭した。
皮はいずれ破れるもの。
でも、このところ喜代美の音は曇っていた。
心が曇っている証拠で、それが三味線の扱いに出た。
皮を張り替えるのに、4、5万円かかるけど、もう一度一生懸命稽古して舞台にでるなら、お金を出してあげよう。
そんな事を話してから、おばあちゃんは喜代美に確認した。
「最後までやり遂げる自信はありますのんか」
ああ、似たようなこと、後で別の人から小草若ちゃんも言われたよ。
「ちりとてちん」にはいつも、あの旋律が違う楽器とリズムでこんな所から聞こえてくる、という変奏曲を聞いているような楽しみがありますね。
ここで喜代美が挫折したのは、自分を変えたいという動機だけあって、手段が前にやったことがあるというだけでとりあえず感の否めないものだったからではないかな。
自分のダメさを直視して乗り越えるにはあまりに幼すぎる。
皆から賞賛を浴びることだけが目的で、三味線を弾くが楽しいのではないから、あっさり諦めてしまうのは当然のように見えます。
では、清海の動機は?
喜代美と一緒の思い出を作りたかったのでしょうね。
こうして二人の心情に思いを馳せれば、懐かしい痛みがよみがえって、リアルタイムでドラマを見ていたときよりもずっと美味しく味わえます。