喜代美の卒業


卒業式の後、清海の周囲には他の生徒達が取り巻いていた。

人垣から離れて立つ喜代美を見つけた清海は、喜代美に駆け寄り、連絡先を書いた喜代美の似顔絵付きのメモを渡した。


清海は本当に喜代美のことが好きすぎるなあ、と思ったら、私は胸が詰まってしまいました。

喜代美の自分の殻に閉じこもった、上っ面の愛想よさに清海は高校卒業する頃になっても気がつけなかったのです。


清海自体、喜代美にとっての順子のように、自分をさらけ出せる友達はいなかったようだし、悩み事があってもきっと一人で解決するタイプで、そんな友達の必要もなかったみたい。

自分だけで物事を抱え込むといっても、主体性を持った性格かどうかは怪しいもので、大阪の大学に進むのも、学校の成績からは地元の短大はレベルが低すぎると先生や親に県外の大学を進められたから、という程度の動機ではないかと、私は想像しました。


清海の場合、この学校、この町だから主役でいるのであって、自分の意志で人生のど真ん中を歩いているわけではない。

ということに気づけないのは喜代美の若さ、幼さゆえでしょう。


清海自身も本当の自分に向き合うのはまだまだ先のこと……。