さて、「ちりとてちん」話に戻るとしますか。

この回は電話のシーンが好きです。

草原さんが修理出来上がりの連絡で草若邸に電話をかけると師匠が出てしまい、草原さんは何も言わず(言えず)電話を切ってしまうところ。

師匠が直接電話をとるなんて、以前は無かったのでしょう。

常に誰かが傍にいて、にぎやかな噺家の家だったから。

電話をとるという場面だけで3年の時間が滝川のようにほとばしり、また、草原さんは師匠の声を聞いて、一気に滝川をさかのぼっていったようにみえました。

そして、喜代美の「徒然草」の話があり、緑さんの「まーくんの笑ろてる顔見てないよ」と続き、草原さんは落語の流れに帰っていきました。


上手くできること、好きなこと、の両立って難しい。

上手くできないと、自分が本当にこの道をすすめるのか、他人に迷惑をかけるばかりで自信がなくなってしまう。

でも、上手くできなくてもいい、好きな道をすすもうとするときに後押ししてくれたのは、一番迷惑をかけてきた妻だというのが、すごく真っ当な話なんだけど、ストンと腑に落ちます。

本日の「ぐるっと関西おひるまえ」は凄かったですね。

桂よね吉茂山宗彦(注:年齢順)揃い踏み〜!

ほんと、祭、だった。

客席も常連のおっちゃんたちや伝統芸能好き風のおばさまたちの姿が見えなくて、ドラマ好き、アニメ好きな、あんなこんな人たちで…。

客観的に見ると、私もあんなこんな人たちに入っちゃうのか。

どちらかというと、外見はドラマ好きおばはんより伝芸好きおばさまを目指している、つもりなんだけどねえ、私は。

「チェック王(by中川あみ氏)」よね吉さんは絶好調で、もっぴーがドラマのイベントで落語をするのには「仕事選ばないね」とツッコミ、もっぴーは屋外会場でレポートしながら真剣に遊んでる。

ゲストの水木一郎さんのコーナーでは、二人とも無駄にうまい歌声を響かせながら盛り上がり、特にもっぴーは大汗かいていた。

新MCの萩原真紀さんのボケ具合もあり、エンディングの三人のトークはトリオ漫才でした(^_^)

NHKだから台本がきっちりしていると思うのですが、どこまでが台本でどこからがアドリブなんだろう。

よね吉さんは好き放題にやっているうようにみえて、きっちり時計を見てまとめているのは「年の功」か。


明日は未生流笹岡次期家元を迎えてのいけばな対決でまたまた楽しみ。

第6週 蛙の子は帰る 第34回

朝の忙しいときに見るドラマだからナレーションを多用して、ながら見できるようになっているのが朝ドラだと思っていましたが、そんなこと言ってられないですよね。

ちりとてちん」のナレーションは主人公の喜代美が若かりし日々を振り返るという視点で語られているので、喜代美が知らない(居合わせない)出来事を描くシーンではナレーションが入りません。

(後になって知りました、とナレーションが入る例外はありますが)

だから、この回の草原宅でのシーンは舞台を見るようでした。

直接会話を交わすのは草原さんと草々だけど、台詞なしで黙って聞いているだけの緑さんの様子で落語家をやめたあとの草原さんの、生活は安定しているけれどこれでいいんやろうか、の日々の暮らしが見えてくるのです。

そういった描写の後で、決め台詞が生きるのですよね。

「落語を思い出しとうないんやなくて、落語が楽しかったことを思い出したくないんやないの?」

第6週 蛙の子は帰る 第33回

四草、男前やなあ、しゅっとしていて、このころは…。

カッコつけて、クールな振りをして、突っ張っていて、悪ぶっていて、言い換えると「ええカッコしい」の四草なので、草々みたいな直球男とは「水と油」の関係ですよね。

どちらのタイプも女性には好かれるのでしょうね、実のところは。

四草は「ええカッコしい」やけど、ホントはシャイないい人。

草々は「いつも一生懸命」なところが、なんとかしてあげたくなる人。


このころの草若師匠のかたくなな態度はものすごく四草的なんだけど、草々はそれを正面から発破をかけて砕いてしまおうとするから、師匠はますます引っ込んでしまうのが切なくて。

草々が内弟子部屋の壁の穴から喜代美に向かって手を伸ばし、愛宕山のテープを借りるところは、震えた手が何かに縋り付こうとしているようだった。


ここで「聞かせてよ愛の言葉を」が流れるのですね。

Je t'aime...と聞こえたら、私は不意に目が潤んでしまいました。

聞かせてよ愛の言葉を

聞かせてよ愛の言葉を


その後、草々は草原さんの家に居候しに行くのですが、その草原邸が大阪市内下町にどこでも見られるような若い夫婦と小さな子供の家族が暮らす一戸建て。

賃貸アパート暮らしから、30年ローンを組んでやっと手に入れた初めてのマイホームって感じ。

子育て中心の生活感があふれまくりのインテリアだけど、和室には年季の入ったタンスが一棹ありました。

そこに草原夫妻の捨てきれない思いが見えるような気が、私にはします。

第6週 蛙の子は帰る 第32回

しばらく更新が止まってしまったのは、NHK-BSで録画した黒澤明特集の「七人の侍」に嵌ってしまったからであります。

昔から、あの仲間集めの前半が大好きだったのですが、今見ると、後半の一人ひとり死んでいくところがなんとも切ないのですね。

ちりとてちんで当てはめると、四草は久蔵だよなあ、と思い浮かびました。

草原さんは七郎次で決まり、草々と喜代美は勝四郎的なところがあるかな。

小草若ちゃんは、内面的に実は菊千代でないかと思っています。


さて、この回は草原さんの「無理や」「ないな」に尽きます。

一旦引いておいて、この後の盛り上がりに備えているのです。

第6週 蛙の子は帰る 第31回

第6、7週と井上剛ディレクター担当の珠玉の二週間。

リアルタイムで見ていたときは、11月でここまで盛り上がってしまって、後の4ヶ月をどうするんだろうと思いましたよ。


磯七さんが店の鏡に徒然亭の弟子たちの名前を書くところで、ようやく私は彼(松尾貴史さん)が左利きだと気がついた。

そう思って「寝床」のシーンを見直してみると、左手で箸を持っている。

だったら、普通は空いている店のカウンターではあの並び方で座らないですよね。

隣の人とひじがぶつかっちゃう。

あれは、台詞の順番の上で意味のある並びだったのかな…?


草々と草若師匠のやり取りのあと、草々が

「俺にとって、落語は草若師匠なんや」と泣くところ。

草々はきっかけはともかく自分で師匠に出会い、選んだということが、実の親子よりも強い思いがこもるのだろうか。

小草若がこの頃、まだ草若に正面から向き合えないというのは、実の親子であるゆえに、自分で落語を選んだ、師匠を選んだという自覚がないから。


う〜ん、画面に出ていなくても小草若ちゃんが気になってしまう。